もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「じゃあすみませんが、おばあさんに渡して下さい。明日もいつもの時間にお願いします」

 ゴゴの根を採るのに手間取ったが、セフィーの導きで群生地を三つ周れたので結果的に約四時間程でかなりの量を採取することができた。

 それでも採取するに当たり、根が必要ない薬草は茎から切り取って根を残し、根が必要な薬草は採るのは群生地でも三分の一だ。全て採りつくす、ということはない。

「ああ。俺はルリィと明日も会えてうれしいし、それに討伐ギルドの指名依頼も入っていないから気にしなくていい」

 私が申し訳ない、とかすみません、とか言うと、何故かヴィクトルさんの眉が下がることに最近になって気が付いた。

 と、いうか、最近までヴィクトルさんの顔をあんまり見なかったんだよね。身長差があるから、見なくても不自然でもないし。

 それを言い訳に、真っすぐ視線を受け止めることもほとんど無かった気がする。

 うん、駄目だね、私。でも今は目先のことだ。明日でゴゴの根は十分集まるだろうし、ローブル草は家の周囲にそれなりにあるってセフィーに言われたし。

 残りのマギラ草は森の水辺に生えているのだが、群生しないので採取するには水辺沿いを歩いて探さなければならない。

 まさかこの辺にある森の水辺が、家の近くの湖から流れる川しかないなんてね。あの湖の周辺は全て結界内なんだよね……。

 ティーズブロウの街から一番近い川は森とは反対側で、そちらではマギラ草は採れない。ただ隣街の方へ行けば、別の川が森を流れているらしい。

 神様が用意してくれた結界は、今では天候は外とほぼ同じだが侵入対象の解除は一切されていない。だが、天候と同じようにそちらも少しずつ緩和されて行く予定だったのでは、と思うことがある。

 私に過保護なセフィーが、結界の緩和をしていないんじゃないかな、って思ってはいたんだよね。

「明日ともう一日、マギラ草の採取に付き合って貰うことになるかもしれません」
「ああ。いつでも言ってくれ。じゃあ、また明日」
「はい。ではまた明日よろしくお願いします」

 とりあえず、セフィーに話してみよう。もう、話合わないといけない時期だと思うから。

 神様。街へ行ってこの世界の人とふれあって、大事な友達もできて、笑うこともできるようになりました。
 恐らく神様は日本での成人の二十歳で成獣となるように、それまでにこの世界に馴染めるように精神の鈍化もゆるやかに消失するようにしてくれていると思いますが、私もそろそろ目を逸らさないでしっかりと自分の目でこの世界を見つめられるようになりますね。どうか見守っていて下さい。

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