やさしいキスをして
「外国っちゃあ外国かな?東京の国会議事堂のそばに単身赴任(たんしんふにん)。」
「華さんは横浜じゃなかったですっけ?」


夜中に電話越しに聞こえる男の人の声に心がそぞろ歩く。


「横浜だよ、家は。」
「国会議員なんすか、旦那さん。」


「ううん、似たようなもんかな。財務省の官僚(かんりょう)。」
「ざ、ざ、ざいむしょう?官僚?キャリアじゃないっすか。」


「そんな驚く?」
「そりゃあキャリアっしょ?」


「ふーん。そう?」
「もう()れ馴れしくできないっすね。」


「そんなことしたらもう口利かんけん!」
「ええーーーーっ!嘘っす。」


  ちょっと怒ったふりをするだけで
    (あわ)てる保が可愛かった。


「じゃあ、うち来て飲むか?明日休みだし。」


   男の人にずっと放って置かれた
      乾いた女の心が
    思わず保を誘ってしまった。


「いいっすか?行きますよ。」


「そのかわりビールならないから買ってきてね。それとツマミもね。」
「了解っす。」

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