【完】イミテーション・シンデレラ
アイドルのセンターにはなれたけれど、正統派ヒロインにはなれなかった気がする。
どうして周りは正統派ヒロインと、陰で暗躍するヒールを作りたがるのだろう。 分かりやすく善と悪を分けたがるのだろう。
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「つーかムカつくんだっつの!!
アイドルなんて止めれてせいせいしてるわよ…!」
「うわぁ…怖い…!」
「ネットの書き込み見た?!
SARARAの老害の南条岬卒業記念!なんつースレッドが立ってんのよ?!
マジでむかつく…!
好き勝手書きやがって!目の前では正々堂々と言えないくせに…!」
「言いたい奴には言わせておけばいいじゃーん。
芸能界なんて所詮そんな世界だもん。 ネットのスレッドなんか見るべきじゃあないね。」
南条岬卒業コンサートから数日。 都内の個室居酒屋で私は、ビールジョッキ片手に10年分の鬱憤を晴らしていた。
ネットの掲示板には、私の様々なスレッドが立っていた。
アンチばかりじゃないのは知っている。 私を純粋に応援してくれた、多くのファンが居たことも。
けれどどうして人間ってのは批判ばかりに目が行ってしまう生き物なのだろう。 卒業してから、ネットの掲示板はSARARAの私の卒業の事ばかりだった。