【完】イミテーション・シンデレラ
真央は自分のコンプレックスを容赦なく昴へぶつける。 あいつはある意味素直な男だ。 どこまでも実直で、真っ直ぐで自分を曲げない。
そしてそんな自分勝手な振る舞いが許されるのは、愛される力があるからだと思う。それは芸能人にとって何よりも大事な付加価値だ。
対して昴は、そんな子供っぽい感情を真央や周りにはぶつけたりしない。
事務所にも我儘は言わないし、辛い事も沢山あるだろうに口には決して出さない。 芸能人の在り方としては、とても自分に似ていた。
与えられた仕事を文句も言わずにこなす。浴びせられる罵詈雑言は受け止める。
「まあ、俺に真央程の才能がないってのは事実だけどね」
「本当にそう思ってるの…。私、昴が俳優であるのを見るのが好きなの。
ずっとずっと芸能界で活躍してて欲しい…。」
思わず泣きそうになる。それを察してか、昴はぎゅっと私を抱きしめる。
トクン、と胸が高鳴るけれど、耳に充てた昴の胸からも同じ鼓動が刻まれていくのが分かって、安心した。
もう少し、こうしていたいわ。許してもらえる? セフレって都合の良い関係だけど、昴と一緒に居る時間は私にとっては特別なものだから。
優しいあなたに、もう少し甘やかされていたい。