【完】イミテーション・シンデレラ

「だって…それは…あの、」

はっきりとしない私に、昴は苛立っている様だ。 だってこれ以上昴の事、好きになりたくない。

このままだったらうっかり口から、昴の彼女になりたいって言いだしてしまいそう。 そんな重い女だとは思われたくない。

「別に梨々花ちゃんがタイプって訳じゃないよ。良い子だなぁーって思うけど。そういう感情は一切ないよ」

「…今はそう思ってなくても、これから一緒にドラマ撮影とかしていくうちにそういう感情が芽生えるかもしれないじゃん!」

「何それ?!芽生える訳ないじゃん!」

「もぉ!!!
正直に言うよ!
実は、梨々花から昴との事を応援して欲しいって頼まれちゃったの。
こういう関係になってる私が言うのもあれだけど…
私は…いいかなぁって思う…。だって梨々花は美人だし、どちらかと言えば綺麗系だし」

言葉が震える。 思ってもいない事を口に出すと、人って本当に震えるんだ。
顔を上げてゆっくりと昴を見上げると、眉間に皺を寄せて明らかに昴は怒っていた。

優しい人ほど怒ると怖いっていう。 私の体をそっと離して、昴はベッドから立ち上がった。 見下ろす視線は、どこか冷たくていたたまれない。

…どうして私の事、そんな目で見るの?

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