【完】イミテーション・シンデレラ
「何それ、ムカつく。」
「え?」
「こういう関係って何? 私はいいかなぁって何が?」
いつもはゆったりと優しく喋るのに、えらく冷たく早口だった。 どこがスイッチだったかは分からない。けれど私が昴の怒りのスイッチを押してしまった事は明らかだ。
言い訳をするように顔を伏せながら、ぼそぼそと呟くように言った。
「…だってこういうの、いけないと思う…。
それに昴と梨々花はお似合いだと思うし…」
ぐいっと昴が私の腕を持ち上げて、無理やりその場に立たせる。
痛いほど強く握られた腕。
ここまで怒った昴を見たのは、初めてだった。
「すっごい不快…。
岬の言ってる事全然意味分からない!
今日はもう岬と話したくない。
送って行くから、今日はもう帰れ…。」
怒って帰れと言うのに送っていってくれるのが昴の優しさ。
こんな時まで、昴の思いやりを感じてしまうから胸が痛い。
車内の中で会話はなくて、互いにため息が降り積もって行くばかり。
こんな風になってしまうならば、昴に抱かれなければ良かった。 こんなに好きになってしまうならば、友達のままの方が良かった。