【完】イミテーション・シンデレラ
Act 6  誰にでも優しい人。 素直になんてなれない…

Act 6  誰にでも優しい人。 素直になんてなれない…




その日から毎日のように着ていたラインの連絡がぷっつりと切れた。
昴を怒らせてしまったのだと気がついてはいたが、理由は分からない。
いくら考えて見ても、探し当てれなかった。

梨々花の事を話してしまったせい? 人の恋愛に勝手に首を突っ込もうとしたせいだったの? あんな風に昴が怒ったのを見たのは、初めてだった。

いっつも人を尊重して、疲れていたって機嫌が悪かったって、顔には見せないタイプ。

気遣いが習性になっているような男だ。 そんな温厚な彼を怒らせてしまった。昴の地雷がどこにあるのかは分からない。 けれどそれを踏んでしまったっていうのは痛い程分かる。


今日仕事で訪れたSTBテレビ局のロビーには、大きなクリスマスツリーが飾られている。
ぼんやりと眺めていると、切なさが一層こみ上げてきた。

クリスマス、どこかに行こうかと言われたの、すっごく嬉しかったのに。 どうして素直に昴の言葉をそのまま受け取って、’嬉しい!’と笑顔を見せれなかったのか。

悔やんでいても仕方がない。 今日だって明日だって仕事は入っている。 テレビ画面の前、落ち込んだ姿を視聴者には見せれない。

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