【完】イミテーション・シンデレラ

楽屋には、真央を探しに来た昴の姿。

昴とばっちりと目が合ってしまって、思いっきり逸らしてしまった。 …なんて感じが悪いんだ。

けれどもどこまでも鈍感で無神経な男の失言は止まらない。 私はそのうち真央の頭ではなく、大切な商売道具の顔まで殴ってしまうかもしれない。

きっと理由を話せば、静綺なら許してくれるだろう。

「昴ー、岬の機嫌が悪ぃ…。俺、なんかしたと思うか?」

「んー…真央は天然で人を怒らせる所があるからねぇ。」

「人を天然呼ばわりするなッ。岬をご飯に誘ったら、キレられた。
そのくせ一条類とは楽しそうに食事の約束なんかしやがって」

はぁ?!!!???!!!
私がいつ類くんと食事の約束をした?!

確かに誘われたけれど、返事は返してないわよ?!
どこまで話を大きくすれば、気が済むの?やっぱり顔、殴られたい?


呆れて物が言えなくなり、ふたりの会話を無視したままバックの中に荷物をしまう。

…今日は家に帰ってゆっくりと休もう。 最近体調もよろしくない。 全部全部真央と昴のせいよ。

真央は余計な事ばかりして、昴なんて…私のウェディングドレス姿’可愛い’の一言も言ってくれなかった…!

嘘でもいつものように優しく、言って欲しかったのに! 優しい嘘っつーのはそういう時こそつくものよ?

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