【完】イミテーション・シンデレラ

最後の部分は完璧な嫉妬からくる八つ当たりだ。

でも許せなかった。 梨々花のウェディングドレスを見た時はいの一番に’可愛い’って言ったくせに。

西園寺さんにも、綺麗だってどーせ言ってたんでしょう? 昴が他の子の事を手放しで褒める度に、私の心はぐちゃぐちゃになっていく。

…こんな可愛くない嫉妬、したくないのに。

「…何だよ、それ。」

いつもの心地の良い低温の声が、怒っていた。
散らばった化粧品を私に押し付けて、昴はスッと立ち上がる。

「俺がいつ誰に良い顔した?」

「バッカみたいって言ってるの!
相手の気持ち分かってる癖に、気のある振りしてそういう態度に傷つく子だっているのが昴は分かってない!
そういう八方美人な所、すっごく嫌い!」

「岬だって、類くんに良い顔してたじゃん。
どう見ても、あの子岬に気があるよね?!
それを連絡先交換して、ご飯食べに行く? 岬だって俺の事言えないじゃん!
どうしてハッキリ断らないの?!」

「どうして断らなきゃいけないのよッ。」

「どうしてもだろ!」


狭い楽屋内、昴と私の言い合いが響く。

あの真央がオロオロと動揺し始めて、「どうしたんだよ、岬も昴も…」と遠慮がちに私達の顔色を伺う。

しゃがみこんだまま、立ち上がれなかった。 それに痺れを切らしたのか、小さくため息を吐いた昴が大きな音を立てて楽屋から出て行った。

追いかける事すら、出来ないよ。 これ以上話すと、嫉妬で気持ちが爆発しそうだった。  楽屋内のフローリングの床に、ぽつりぽつりと涙が落ちていく。

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