【完】イミテーション・シンデレラ

慰めのような言葉をかけてくれるとは思っていなかったから、それも意外だ。
髪を巻かれながらも彼女は、椅子をくるりと動かしてこちらに身を寄せる。

「愛歌ちゃんってば、あんまり動かないで」

「はぁーい、ごめんなさーい。
でも私、南条さんと類くんお似合いだと思うけどなあー…」

「ま、まさか……。アイドル同士の恋愛って私は無しです。
てゆーか、業界人との恋愛もこりごりって言うか、嫌だし。」

はっきりそう言うと、西園寺愛歌はつまらなさそうに唇を尖らせた。 そうして、その表情と同じような言葉を口だすのだ。「つまらないの。」と、拗ねた顔ぶりは女王とは程遠かった。

もしかしたら女王様のご機嫌を損ねてしまったかもしれない。何て言っても、彼女が天才音楽プロデューサーの柊結弦と交際しているのは、周知の事実だからだ。

ひやりと背中に冷たい汗が滲む。 …もう敵は作りたくない!メンタルぎりぎりなのに…!

「あーら、それって私に対する嫌味ぃ?」

ニヤリと口角を上げた彼女。 思わず焦って両手をぶんぶん振って否定をすると、可笑しそうに声を上げて笑う。

全然怒っているような様子ではなくってホッと胸を撫でおろす。

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