【完】イミテーション・シンデレラ
「南条さんって、テレビで見るのと感じが違うのね。 意外」
「そ、そうですか?」
「うん。テレビではぶりっこアイドルって感じだったから。
意外に挙動不審な感じでびっくり」
それは…褒めているのか貶しているのか。 けれど彼女の表情を見る限り、悪い気はしない。
「…西園寺さんは…業界人同士の恋愛って大変じゃありませんか…?」
まさかこんな問いかけを彼女にする日が来るとは。 余りにもあっけらかんとした態度と、思っていたよりずっと話しやすそうな彼女のオーラを前についつい訊ねてしまった。
意外に表情もころころと変えるし、想像以上に落ち着きがなくってメイクさんに何回も動かないでと叱られていた。 その度に彼女は拗ねた素振りを見せるのだ。 そんな所はテレビに出ていた完璧な彼女のイメージとは、程遠い。
「でも好きになったら、そんなの関係ないし。
私、有名な業界の人だから彼を好きになった訳じゃないわ。
彼の才能に惚れているのは本当だけど、たとえ業界人じゃなかったとしても彼に出会っていれば恋に落ちていたと思うわ」
きっぱりと言い切った彼女の顔は、元々備わっている美しさ以上に綺麗だった。