【完】イミテーション・シンデレラ
ぐっと握りこぶしを作ってこちらに笑顔を向けて、メイクルームを後にする西園寺さんの後ろ姿を見つめていた。
複雑な心境だった。
昴はいつだって素直な気持ちを私にぶつけてくれていた。 その昴を前にいつだって素直になれなかった自分。
いつだって昴は優しくて、その優しさに甘えすぎていたの。 優しくされるのを当たり前に思っていた。
側に居てくれて、気にかけてくれる事さえ当たり前だと思っていたせいだ。 昴は誰にでも優しいから、自分にかけてくる優しさは特別じゃない。そう思って自分の気持ちに蓋をして
けれど一緒に居たくて、セフレでも良いから触れていたかった。 梨々花に協力するって言ったけれど、本当は嫌だった。
あの日の気持ちを、素直に言えたなら。
まだ遅くないというのならば、西園寺さんのように胸を張って堂々と伝えたい。
このままの関係じゃ、嫌だ。 芽生え始めた勇気を前に、走り出した気持ちは止められない。