【完】イミテーション・シンデレラ
上ばかり向いていても、東京の濁った空は星を映さない。
けれどその代わりこの街は、眩い程の光がいつでも消えずに灯る。
「ああ、そういう事か。 じゃあ俺もお願いしようっと」
「何のお願い?!」
昴の体を包み込む私の両手をパッと離して、くるりとこちらを振り返る。 昴は穏やかな顔をして微笑み、自分の両手を握り締める。
ちょっとだけ目を閉じて、直ぐに包み込むように私を抱きしめた。 そして言ったんだ。
「教えない。人に教えたら願いは叶わなくなるっていうし~」
「もぉ…意地悪だなあ…」
「岬の願いと同じだったらいいな」
願うだけでは、全ての夢を叶えられないだろう。
だからこそ私達は努力をして生きて行く。 昴と一緒にいる未来のために、努力する。
私、努力は得意な方なの。人前では弱音は吐かない方だし、どちらかといえば可愛くない性格なのよ。 昴ならば知ってるわよね?
でもたまにはとびっきり甘いあなたにただただ甘やかされたい。
誰にでも優しい男は嫌い。
私だけに特別な顔を見せる人が良い。
それでも昴の誰にだって優しい性格が変わるわけがない。そこが昴の良い所だと思うから。 だから時たまで良い。ほんの少しで良いから。
他の人より私にちょっぴりだけ特別優しくして――。