【完】イミテーション・シンデレラ
アイドルとしての才能は彼女に到底敵わない。 でも誰かと自分を比べる必要があったのだろうか。
マイナスの言葉ばかりが頭に残ってしまって、私を応援してくれて好きだと言ってくれる人の声を聞こうともしなかった。
梨々花は潔かった。 ぎゅっと手を握り締めて、満面の笑みを残したまま去って行った。
私って…情けない。年下の子に嫉妬したり、自分に素直になれなくって…昴の事だって遠回りばかりで。
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「岬ー撮影入るよー」
「はーい!」
「撮影終わったら、取材入ってるから。
3社もあって大変だと思うけど、頑張ってね。
夜からは約束通り開けてるから」
笹田さんがスケジュール帳を確認しながら、時間の調整をひとりぶつぶつと言っている。
たくましい二の腕に抱き着くと、びっくりしたようにこちらへ視線を落とした。
「笹田さんッ。ありがとうね!」
「何がよぉ~…」
「いつもいつもありがとッ。」
ちょっぴり照れ臭そうに見えた横顔は、どこかお母さんの顔。 迷惑そうに私の腕を振り払って、歩き出す。