【完】イミテーション・シンデレラ
付き合っても相変わらずこんなペース。 ふにゃっと笑う昴は、いつだってニコニコしていて私を褒めてくれる。
クリスマスの日から、約4か月。 昴の冬の連続ドラマの放送が終了した。 それでも仕事は立て込んでいる。
人気商売の私達にとってそれはありがたい限りだが、映画やドラマに引っ張りだこの昴は相変わらず忙しい。
忙しいのに愚痴ひとつ吐かずに、私との時間も作ってくれる。 こいつって24時間人に気を遣って生きてるんじゃないかって思う程、優しくされる。
私はといえば、ただいまお仕事迷走中。 芸能界で生きて行くって決めた。辛い事があっても私の存在がテレビを見ている人の希望になるのならば、許される限りこの世界に居たい。
ぶっちゃけアイドルとしての才能はない。
歌もダンスも人並みで特に取り柄はない。
バラエティー番組に出ても気の利いた言葉ひとつ言えないし、昴や真央みたく演技の才能があるわけじゃない。
それでももう周囲の声は気にならなくなっていた。 私は私に出来る事を一歩ずつ着実に積み重ねて行くだけ。 そしていずれかは――…。
ちらりと隣に居る昴に視線を送る。
すると「ん?」と首を傾げてこちらを見つめた。