【完】イミテーション・シンデレラ

ここまで来るのは本当に長かった。

辛い辛い下積み時代。アイドル氷河期を経て、SARARAはやっとアイドルとして国民の顔になった。

忙しく過ぎる時間の中で登り詰めるのはあっという間だった様にも思えるけれど。 それでも私は10年近く、このアイドルという職業を全うした。

加入と卒業を繰り返す中で、苦楽を共にした初期メンバー達はほぼ私より先にアイドルという職業を卒業していった。 その中には、脱落していったものも少なくはない。

周りは皆ライバル。仲間に見せかけたとしてもいつだって足の引っ張り合い。 同い年の女の子の大所帯。 仲良くやれと言うのは無理な話なのだ。

けれど私達を応援するファンの大半が、メンバー間の仲の良さを求める。 そして私達は夢を売るのが仕事で、決して裏側のアイドルの涙や悲しみを見せることはしない。


登り詰めるのはとても早く感じるのに
転落はいつだってじわりじわりと迫り来る。


アイドルの賞味期限は短い。
それ程消費されていくものが多い職業なのである。

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