【完】イミテーション・シンデレラ
頬をツンツンとする指先を思いっきりぎゅっと握ると、笹田さんはぎゃっと悲鳴を上げて大げさに痛がる振りをする。
そんなに強く握ってないもん!それにアイドルだから力もないもん。
ベーっと舌を出すと、笹田さんはぎゅっと私の頬を優しく引っ張った。 そして甘いため息を吐くのだ。
「せっかくグループも卒業したし、恋愛はするべきだと思うけどね」
「卒業したばかりなんだから、そんなの考えられないもん」
拗ねた素振りを見せて子供みたいになってしまうのは、笹田さんがお母さんみたいな存在だから。
10代の頃からずっと面倒を見てくれた人だ。ついついいじけてみたくなる。
「恋は女の子を綺麗にさせるっていうしね。
岬がますます綺麗になって芸能界で活躍する姿を見るのは楽しみだわ」
ちょっぴりSだけど、とっても面倒見の良いマネージャー。
そんな事を言われたら、芸能界引退したいなんて益々言い出せなくなっちゃう。
絶対に私、この業界向いてないと思うんだけどなー…。嫌な事もはっきり言っちゃうし、表情にも出ちゃうし