【完】イミテーション・シンデレラ
そして何よりも大切なのが若さだと思う。
人間は飽きっぽい生き物だ。 ファンはいつまでも長続きはしない。
次から次へと新しい子が入って来るグループ内で、目移りをしてしまうのは当たり前で人々は新しい刺激を求める。
私は今年で23歳になる。 周りは早すぎると言うかもしれない。 けれど確かにアイドルのピークは10代なのだ。 そこからはもう下がって行くだけ。
引き際は間違えたくない。 それが私が卒業を決めた理由のひとつ…。 そしてもうひとつは…。
「岬さん!本当に素敵でしたッ!」
コンサートを終えて、私はメンバーに取り囲まれていた。
惜しむように泣く者。 ありがとうございます、とお礼を言う者。 岬さんが居なくなったらSARARAはどうするんですかぁ?と嘆くもの。
様々だ。
けれど忘れてはならない。私達はライバルだ。誰だって後ろで踊りたくなんかない。一歩でも前に出たい。 たったひとつ用意された椅子。センターになりたい。
センターになりたいと願わないのならば、どうしたって比べられてしまうアイドルに等そもそもなるべきではないのだ。
中には本当に私の卒業を悲しんでくれているメンバーも居るかもしれない。 でも大半がほくそ笑んで、空いた椅子を虎視眈々と狙っていたのだ。
涙目になって私の両手をぎゅっと握りしめるこの女は、確実にそうだ。