【完】イミテーション・シンデレラ
「えー…酷いじゃん。 ちょっとショックなんだけど…。」
「大体昴にお土産を買ってくる義理なんかないし!」
おいおいおい、私一体何を言っちゃってるの?!
ばっちり昴にもお土産を買ってきたじゃないか。昴が喜ぶかも、と考えながら選んだじゃないの。
私の暴走にこちらを振り返った真央は不思議な表情を浮かべる。 そしてまた何かを言いかけようと口を開くから、手に持っていた雑誌を取り上げて再び頭を殴る。
「何すんだよ!岬!」
「うるさい!蚊が飛んでいたのよッ。蚊が!」
「蚊…?もうすぐ冬なのに…?」
「そう。蚊が…。もしも真央の顔が刺されたら大変。
国宝級の美しい顔なんだから」
「確かにそれは大問題だ。 くそッ。蚊め、俺の美味しい血を吸おうとするなんて!
ボロ寮をせっかく新しくしたのにどこから入り込みやがった。
岬ッ、退治するぞ?!」
こいつが馬鹿で本当に良かった。 雑誌を丸く握りしめて蚊退治を始めた真央。
馬鹿かよ。この冬に蚊がいるわけない。でも腕を引っ張られ、存在しない蚊を一緒に探す羽目になってしまった。