【完】イミテーション・シンデレラ
「もう、捕まえたよ。」
「そうか、それならば良かった。
俺蚊に刺されやすい体質なんだよ…。
つか!昴!何を静綺に近づいてやがる!離れろ!」
「おいし~い、本当にここのクッキー旨いよね。 岬、ありがとう」
ふにゃっとした昴の笑顔。 嬉しいのに、こんなに胸が痛い。
ツンと顔を背けて「昴の為に買ってきた訳じゃないし」と思わず言ってしまう。 どうしてこういう言い方しか出来ないんだろう。
それでもこんな態度の私に、昴は変わらない態度を見せるから…切なくなってしまう。
訊きたい。でも訊けない。
答えは何となく分かっているから。 あの夜の事なんか一切話さずに、普通に接してくるから。
あの夜の事なんて昴にとって大した事ではないんでしょう?
でも私はあの夜から昴の事ばかり考えている。 甘くて苦いこの胸の痛みは、切ない恋の始まり。
1回やっちゃった位でこんなに昴の事が気になるなんて。
恋死ね!マジで死ね!
叶わない恋に嘆くくらいならば、こんな気持ちなくなってしまえば良いのに。