【完】イミテーション・シンデレラ
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その日、家に帰ると珍しく昴から電話が掛かってきていた。 お風呂から出て携帯を確認して飛び上がってしまった。
落ち着かずにリビングをウロウロとしながら、着信画面を何度も確認する。 自分が思っているよりずっと舞い上がっている。
メッセージのやり取りは結構するけれど、電話は珍しい。
ふーっと大きな深呼吸をして、ソファーに座り携帯の着信ボタンを押す。
ドキドキドキドキ。 可愛らしい声を作って、愛らしく電話に出るんだ。いつもの可愛くない態度は封印。
そう決意した矢先なのに。
「も~しもし、岬?」
「何よッ!」
自分を呪いたくなる。 どうして意識すればするほど可愛くない態度ばかりとってしまうんだろう。
ついついいつものノリで強気な態度。 何もいきなり’何よ’はないだろう。 愛らしい声を出して「どうしたの?しゅばる…」とか言ってみたいもんだ。
アイドルとしての南条岬ならば、どれだけだって自分を偽れるのに。どうして昴の前だとこうなっちゃうの?
「ごめんね、寝てた?」
それでも電話口の昴の声はしっとりと優しい。
私だったらこんな態度で電話に出られたら、無言で切ってしまう。 どこまで心が広いんだ。