【完】イミテーション・シンデレラ

「別に寝てないけど、どうしたのよ」 あーーーー…だから何でこんな偉そうなの?!

「そっか。なら良かった。俺さっき仕事終わった所だよ」

「ふーん、相変わらず忙しいのね。」 こらこら、可愛くお疲れ様って言えよ。

「岬も仕事だった?」

「私も今日は1日いっぱい雑誌の取材と撮影だったわ。
卒業したてってのもあって今が1番忙しいのかもしれないわね。
可愛い可愛いって歯の浮くお世辞ばかり言われて、余計疲れちゃうわ」

ふふっと小さく笑っているのが聴こえる。 昴の低音の落ち着いた声は、耳にとても心地が良い。

「お世辞じゃないよ。岬は可愛いもんね」

「あんたに言われたくない!心にも思ってないくせに、ムカつくのよ!」 おいおい、そこは素直にありがとう、でしょ?

多分、これがシナリオありきの恋愛ゲームだったら、とっくにジ・エンドだろう。

頭では分かっているのに、どうしても正解の選択肢を選べない。
これじゃあ王子様も呆れかえってしまうに違いない。

「それより用事は何よ。私疲れてんだからさー」 はぁー…もう言葉も出ない。 どうして昴の前だと素直になれないんだろう。

「いや、特に用事はなかったんだけど、声が聴きたくなったかな。」

「はぁ?!」 どうしよう…すごく嬉しい。用事もないのに電話を掛けてくれて、声が聴きたかったなんて。

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