【完】イミテーション・シンデレラ

「だってずっと会ってないじゃん。俺も岬も忙しいからあんまり時間も合わないしさ。
何か会いたいなぁ~って思って。 俺、岬と一緒に居ると何だかんだ元気が出るからね」

じんわりと熱いものがこみ上げてくる。 昴はどうしてそんなに優しいの?そんなに素直なの?
分かっている。特別な感情は無いって事。

それでもちょっとした昴の言葉にこんなにも嬉しくなってしまうものよ。

「ねぇ、今度いつ会えるだろうね」

私達は恋人じゃない。なのに恋人の様な事を言うのは、何故?

「今度仕事で会えるんじゃないの?あんたも出るんでしょう?ウェディングコレクション。打ち合わせとかリハがあるでしょ」

自分が惨めにならないように、何度も言い聞かせた。
昴が人に優しいのは、挨拶の様なもんだ。

女の子をときめかせる言葉も自然と口から飛び出てくる。そこに大きな理由はない。

知り過ぎているから、勘違いしないように、万が一喜んでしまって舞い上がったら、自分が惨めになるだけだから。

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