【完】イミテーション・シンデレラ
愛される事は、才能なのだと私は思う。
何にも出来ないのに、何故か気になってしまう存在。
歌もダンスも下手糞で、笑顔も上手に作れないくせに放っておけない。
梨々花もどちらかと言えば、不愛想だ。 けれどさっきの様に感極まると顔をぐしゃぐしゃにして感情をむき出しにして泣く。 楽しくないと笑わないくせに、時たま見せる笑顔はそのたった1回で大抵の人を惹きつけてしまう。いわゆるギャップ萌えっつー奴だ。
不公平だと思う。 だけど梨々花の不器用さにはアイドルとしてドラマがある。
ごく普通の不器用な少女が、アイドルとしての階段をのぼっていくシンデレラストーリー。
日本人は分かりやすいシンデレラストーリーが好きだ。 何も持っていない普通の女の子が全てを手に入れる。 自分と投影しやすいからだと思う。
昔から何事においても平均点以上を取れた。
でも平均点じゃ悔しいから、出来るようになるまで陰で努力した。
そうすると何故か周りは安心して、’岬は頑張らなくても何でも出来るからね’と放って置かれた。
’何でも出来るから、皆のお手本になってね’と。
けれどファンの人々が最後まで応援したくなるのは、何も出来なくて放っておけない子なのだ。 これはアイドル業界だけの話ではない。 恋愛面においてもそうかもしれない。