子犬系男子の甘い溺愛が止まらない



「優しいね、天馬くん」


「そう? 僕が本当に優しくするのは好きな人だけだけどねっ」



色を塗る手は止めず、ニコッと笑う天馬くん。


そんな笑顔にドキッとした。


ダメだってわかってるのに、胸のドキドキは治まってくれない。



「好きな人って……綾瀬会長ですよね?」


「もちろん。 僕の一目惚れだからね」


「こんなに愛されてる綾瀬会長、羨ましいなぁ」


「……どうかした?」


「ううんっ! なんでもない! 残り頑張ろ?」



綾瀬会長が羨ましくなったのは本心。


あぁ、どうしよう。


わたし、天馬くんのこと好きになっちゃったのかもしれない。


ずっと鳴り止まない心臓の音が、そう告げている。


綾瀬会長のことしか目に映っていない天馬くん。


好きになってもこの想いを届けることができないのに。


ドキドキという胸の音は、だんだんとチクリという痛みに変わっていった。




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