子犬系男子の甘い溺愛が止まらない
「……えっと」
「もしもう相手がいるならいいけど、いないなら俺と踊って欲しい」
真っ直ぐにわたしを見る藤ヶ谷くんは、告白してくれたあの日の同じ目をしている。
藤ヶ谷くんも、あのジンクスを知ってるの?
知っていて、わたしを誘っているの?
それともただ単に他に踊る人がいなくて、生徒会メンバーとして一番親しいであろうわたしに声をかけているだけ?
"天馬くん、誘ってみたら?"
仁奈ちゃんに言われた言葉が、ふと浮かぶ。
わたしが天馬くんに気持ちを伝える第一歩として、仁奈ちゃんが提案してくれたこと。
まだ天馬くんのことを誘ってはいない。
もし、誘えたとして、天馬くんがオッケーしてくれるかどうかはわからない。
今のわたしはフリーだ。
でも、今藤ヶ谷くんにオッケーしてしまったら、天馬くんとは踊れない。
「……ごめん、藤ヶ谷くん」
ポロッとわたしの口から出てきたのは、その一言だった。