子犬系男子の甘い溺愛が止まらない



「……えっと」


「もしもう相手がいるならいいけど、いないなら俺と踊って欲しい」



真っ直ぐにわたしを見る藤ヶ谷くんは、告白してくれたあの日の同じ目をしている。


藤ヶ谷くんも、あのジンクスを知ってるの?


知っていて、わたしを誘っているの?


それともただ単に他に踊る人がいなくて、生徒会メンバーとして一番親しいであろうわたしに声をかけているだけ?



"天馬くん、誘ってみたら?"



仁奈ちゃんに言われた言葉が、ふと浮かぶ。


わたしが天馬くんに気持ちを伝える第一歩として、仁奈ちゃんが提案してくれたこと。


まだ天馬くんのことを誘ってはいない。


もし、誘えたとして、天馬くんがオッケーしてくれるかどうかはわからない。


今のわたしはフリーだ。


でも、今藤ヶ谷くんにオッケーしてしまったら、天馬くんとは踊れない。



「……ごめん、藤ヶ谷くん」



ポロッとわたしの口から出てきたのは、その一言だった。




< 213 / 269 >

この作品をシェア

pagetop