はじまりはステレオタイプの告白
線路沿い。人気の少ないところまでくると、昴は話してくれた。昼休みに、私が同棲解消を考えていることを知ったと。
それから午後の小休憩で双子に会って、私が悩んでいることを聞いたという。
「どんな風に双子に聞いたかは分からないけど、同棲解消しようなんて、決めてないよ」
「距離は、置くんだろう?
…好きだかどうか分からないから」
「それは…っ!」
泣きそうに眉毛を下げている昴の表情に、探していた答えはもう見えはじめているのに、胸が軋んで言葉が続かない。
思い出すのは、仕事ではあまり表情の変わらないこの人を、私といる時には、幸せな表情で埋め尽くしてあげたいと思っていた "はじめ" のこと。
なのに今日は、悲しい顔ばかりさせている。
「それでも俺は、円と一緒にいたいよ」
歩くことをやめた私を、昴が振り返る。
思いがけないコトバ。真剣な表情に、ついていけずに息を忘れた。
「…君がいない人生なんて考えられない」
続けて昴が付け足したその言葉に、思わず口元を手で覆った。
だってそれは、記憶してしまうほどよく知っている言葉。
「…円とはじめてあの映画をみた日に決めたんだ。プロポーズはこの言葉にしようと」
私の大好きな映画の、お気に入りのシーンなんだから。