はじまりはステレオタイプの告白



惹かれあってすれ違って。確信して。改めて想いを伝える大切なシーンで紡がれる重みのある言葉。


雨の日に、必ず2人でみていた。
今となっては何回みたかなんて数えられないし、一緒にみた全部の記憶がクリアな訳じゃない。


…けれど。


1番最初の日に昴の隣で、確かに想っていたことを思い出した。


私ももう、昴がいない人生は考えられないなって。そんな風に。


「…もう一度、好きになってもらえるよう努力するから。他のところにはいかないでほしい」



灰色に映し出されていた最近が、幻みたいに。

目蓋に描かれた大切なシーンが、映像よりも煌めき出している。



「…バカね」

「…え?」


私も昴も。

聞こえないように呟いた声。反応した昴に、ふるふると頭をふる。



「それなら、昴が想ってるコトバを聞きたい。
私の好きな映画の台詞じゃなくて」



本当は、答えなんてもうとっくに出ていて。
きっと、最初からひとつしかあり得なかったはずなのに。


それでもやっぱり、昴のコトバで聞いてみたかった。


一般常識とか世間体とか、ガチガチなもので凝り固まった昴のステレオタイプなコトバの中にある、昴だけの想いを。



「…円がいない人生なんて考えられない」



そう望む私に、昴はもう一度。

けれども今度は私の名前を添えて告げた、あのコトバ。



「これは俺自身、思っているコトバだよ」


近づいてきて、私の指先にそっと触れる昴の指が、緊張していた。

繊細な熱を感じていると、昴の想いが伝わってくるようで、私まで、鼓動が少しはやくなっていく。


「…円と出会ってからずっと思ってた。
一緒にいることで湧き出るこの気持ちはなんだろうと。次第に強くだけなっていく、何か。

その答えを、あの映画をみた時に知ったんだ。
こういうことだったのかと」


ふれていただけの指が私をつかまえて、力を込めた。

まるで、離さないとでもいうように。


「…だから。俺のコトバでもあるんだ」


そういって、どうせすぐ持ってくれるのに、私が両手でも抱えきれないくらいの花束を、私の腕に閉じ込めた。



「…俺と、家族になってください」


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