はじまりはステレオタイプの告白
 



…恋人のはじまりも、思い返せばこんな感じだった。



"…困りましたね。好きになってしまったようです。私と、付き合ってくれますか?"



ステレオタイプな昴の、ステレオタイプな告白。


告白やプロポーズと聞けば、誰もが思い描けそうなコトバのひとつ。

映画の助けを借りなければ、どちらもトクベツ飾り立てられたコトバではなかったけれど。



「昴がそんな風に想ってくれていること、知らなかった」



私には、それがいい。


コトバの中にある昴だけの想いが、何よりも嬉しいの。



付き合って4年目だというのに、今日の昴はいまいち私の感情に鈍感で。

いつもは察してくれそうな私の気持ちにも、確信が持てないようなそんな顔をしている。



「コトバだけじゃ、全然足りないけど」



それでも、家族として生きていきたいと伝えてくれる昴を、好きだと思った。


薔薇の花束を私の腕に閉じ込めたあと、重さによろけないようにとずっと支えてくれている、大きな手。

そのさりげないやさしさも、好き。


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