はじまりはステレオタイプの告白




…今まで、何をこんなに迷っていたんだろう?


昴のコトバひとつ、行動ひとつで、簡単に変わるセカイがここにあったのに。


確かにはじめの頃のように、情熱的ではないから、何もないと見失ってしまうけれど。


私のセカイを一瞬で変えられるのは、昴だけ。



…私の方こそ、手放しちゃいけない。




「私も、昴がいないとダメ」

「…え?」



昴の支えを借りても、想像してたよりずっと重たい薔薇の花束。

支えてくれている大きな手に、ふれて。

薔薇越しにみあげる昴は、間抜けな顔をしている。


1人視界をにじませている私がなんだかバカみたいだけど。…不思議と愛しさが胸に広がっていく。


はじまりの甘酸っぱさとは違う、やわらかなあたたかさが確かにあって。



唇にふれたくて、つま先を伸ばしてみた。


私達を繋いだ薔薇が潰れないように守ろうとすると、届かなくて。それに気づいた昴が、目尻に皺をつくってわらった。


近づいてくる昴にしあわせを感じて、2人一緒に、目を閉じた。



「………」



ただ、ぬくもりにふれて終わるだけのキスは、いつぶりだろう。


足りないはずなのに、はじめて昴を知った時のように、あたたかすぎて泣きたくなる。


余韻の中で瞳があわさると、互いに照れて笑みがこぼれた。



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