はじまりはステレオタイプの告白
「もういっそ、アブノーマルなことでもしてみたらいいんじゃん?」
「……っ?!」
休み明けの仕事。日々たまっていく靄を、私ではない誰かなら解決できる気がして。ランチの合間を狙って捕まえた同僚。
だけども想像外の角度から提案されたそれに、口に運んだスープカレーを吐き出しそうになる。
「ちょっと北斗(ほくと)、円で遊ばないの」
堪えた分、スパイスがダイレクトに喉にささって、水に手を伸ばした私に、ペーパーナプキンも差し出される。細くしなやかな手。
「なんだよ七星(ななせ)。俺は男の目線から真剣に…」
張り合うように、空になったグラスへ新しい水が注がれる。今度は、骨張った手。
「円の反応みたかっただけでしょ」
「ち、バレたか」
私を挟んで、一種のゲームのように張り合う2人は、性別こそ違えど、ほぼ同じ顔をしている。
秘書課にいる、双子の同僚で。
頭が柔らかく機転も効く2人なら、私とは違う視点から何かみえるんじゃないかって、ついつい相談をしてしまう存在だったりする。
「でもさ、真面目な話。一回他と遊んでみれば?飲みとか合コンとか。あ、俺とデートしてみる?」
…まぁ中々。特に北斗の方は、柔軟すぎるというか軽いというか。
あり得ないことを言っているのに、キレイな顔で楽しそうに笑っている北斗とは、感覚が違いすぎていつも頭が追いつかないんだけど。
「こーら。どさくさに紛れて円のこと口説かないの」
冷めた目でみつめる私の代わりに、七星が横から北斗の手綱をにぎる。
間に私がいる分、正しくは言葉で制しただけだけど。間に私がいなかったら、手が出ていてもおかしくない勢いだった。
「いやだってさ、高柳(たかやなぎ)さんのこと好きかわかんなくなってんならさ。手っ取り早いじゃん」