はじまりはステレオタイプの告白



昴のこと、好きか分からなくなってるなら。


北斗にいわれたその言葉に、何故だか胸がギュッとなった。



「…円と高柳さん、長いもんねぇ。新卒からだから、付き合って3年くらい?」


「今年で4年目。去年の夏に同棲はじめたから、それも、もうすぐ1年」


4年前の春。新卒で今の会社に入社した時には、すでに昴は経理部にいて、無駄なく正確な仕事ぶりは評判だった。私が配属された同じフロアの総務部へ、簡単に噂が届くくらいに。


一体どんな人だか知りたくて、デスクを覗いた先。

ひと目で生真面目だとわかるサラリとした黒髪と、なじみのよい細身フレームの眼鏡姿が、もう、好きで。


社内恋愛は考えられないと思っていても、諦められなかった。


2つ年上の頭の堅い昴と、職場で職場以上の関係になるのは大変だったけれど、それでも実った恋。

なのに、どうして。



「入籍もせずに同棲したのが間違いだったのかな」


いくら昴が、結婚を前提にと持ち掛けてくれた話だったとしても、一つ返事で受け入れるんじゃなかった。

去年の今頃は、梅雨明けと共にやってきた宝石箱のような幸せに期待しかなかったのに。今は真逆。


…特別キライではなかった夏の訪れを、こんなに憂鬱に感じる日がくるなんて思わなかった。


休憩室にあるTVから流れる昼のニュース。
今週は晴れ続きで最高気温を記録する可能性も高いという予報に、ため息がでる。



「いっそのこと、同棲解消してみたら?」

「え?」


「好きか分からないなら他の人みてみるのもありだとは思うけど、その前に距離とってみるのも一つの手じゃない?」


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