はじまりはステレオタイプの告白
「相変わらず仲良いわね」
「あ、円!」
と、息ぴったりに華を咲かせる笑顔に、思わず笑った。双子ってすごい。
双子なら、お互いのことも何でも分かるのかな。
「で?なにを話してたの?」
「んー?高柳さんのこと」
「しょうもないなって悪口だから、まだ彼女の円には内緒な?」
「まだって…」
別れるとは、言ってないんだけど。
距離を置くかも、同棲を解消するかも決めていないのに。
内緒のポーズをしてお手本のようなウィンクをみせた北斗は、作戦会議をすると意気込んでいたけど、私は未だにその前段階で動けなくなっている。
…どうしよう。
「ま、とりあえず早く飲みにいこうぜ!
のど乾いた!」
「円の好きそうなお店予約したから、たのしみにしてて」
2つの手に引かれてロビーを出ようとすると、外に1台のタクシーが止まっていることに気づく。
七星と北斗が手配したみたいで、運転手が2人に気づくと扉を開けて外に出た。
自動扉が開く頃、慌ただしい革靴の音がロビーに響いて振り返ると、足早に近づいてくる昴の姿。
「…え?」
近くまでくると、少し息が切れていて。知的な眼鏡姿とは、なんだか不釣り合いだ。
やっぱり、よほどのことがあったのだろうか。
手を伸ばして僅かに着崩れたスーツに触れると、反対に私の手がつかまれてしまう。
「円がいるなら、俺もいっていいだろうか」