はじまりはステレオタイプの告白
私の同僚で気心の知れた七星や北斗だとしても、社内の人の前。
それなのに。四角四面の昴が、きっちりしていない姿をみせることも、私を円と呼ぶことも。
触れてくることなんて、尚更、信じられない。
「ダメですね」
心配する私を他所に、北斗は仕事の顔をする。
「飲み会という名の合コンなので、カップルで来られると迷惑なんです」
さらりと言ってのける知らされていない予定に、体中の血液がどこかに引いていく。
「待って、合コンなんて聞いてな…」
「なので、円のことは連れて帰ってくださいね?」
にっこりと笑う2つの顔。今日何度目かのキレイな笑顔は、どこか悪戯な表情をしていた。
私達は代打を待たなくちゃいけなくなったので、呼んでおいたタクシーは使ってくださいと、昴と一緒に詰め込まれた車内。
お互いに何か言いたいことがあるのに言えないまま、左右それぞれに流れていく景色を無駄遣いしていく。
元々昴も私も、沢山喋るタイプではないし、無言の時間を気にしたことはなかったけれど。
今日は違う。不思議と目立って重たく感じた。
気まずさが充満していく車内で、
「あっ、すみません。次の駅前で停めていただけますか」
忘れものを思い出したように、昴の声がブレーキをかけた。