夢に君を想う話
いつだって、春香は優しかった。


入学式の会場が分からなくて迷っていた俺に、春香は声をかけて会場まで案内してくれた。


サークルが一緒だったときは、すごく嬉しくて、思わず声をかけた。


そんな俺に、春香は嬉しいそうに会話してくれて、サークルから、同学年、そして二人で遊ぶようになって。



あっという間に春香を好きになって、春香の一番になりたくて。


告白したら、照れくさそうに頷いてくれた春香が、めちゃくちゃ可愛かったのを今でも覚えてる。



親と喧嘩した時も、春香は俺の話をちゃんと聞いてくれて、一緒に仲直りの方法を考えてくれた。



友達付き合いの多い俺だから、不安にさせることはいっぱいあっただろうけど、不満は一つも言わなかった。



最近は喧嘩も多かったけど、そのどれもが些細なもので、いつも春香は「ごめんね」って一緒に謝りあってくれた。





「…………ズズッ」





思い出せば出すほど、どうしようもなく春香のことが好きなのに、どうしてあんな言葉を言ってしまったんだろうと後悔する。


もし、今この時間に、春香が本当に別れを決意してたらどうしよう。





俺は、今も、こんなに春香が好きなのに。




言わなきゃよかった。


「別れる?」なんて。



口に出した言葉はもう取り戻せないのに。


どうしたって悔やまれてしまう。
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