夢に君を想う話
「なんで秋が怒るのよ」


「別に怒ってねぇし」


「嘘じゃん」




大学生になって出会って三年半。


恋人になって三年と少し。



いつからか、こんな喧嘩が増えて。


いつからか、秋は面倒くさそうに頭をかいて。




「………はぁ」




秋のため息、最近増えたなって、私、気付いてる。




「…………い」


「え?」






「秋のことなんて、嫌い」






傷ついてることをうまく伝えられない私は、秋を傷つけることしかできなくて。


本心じゃない、思ってもない言葉が、口をついて溢れて、ハッとする。




「……………じゃあ、別れる?」





嘘だよ、なんて言い繕うよりも早く、君がそんなことを言うから、



私は何も言えなくなった。



別れるなんて、聞きたくなかった。


秋の中にそんな選択肢があるなんて、知りたくなかった。




………………………なんて、傷つける言葉を吐いた私が、ショックを受けるのはきっと間違ってる。



「………………一旦、外出るわ」




ハンガーにかけたコートをもう一度着た秋は、それだけ言い残して部屋を出ていく。


パタン、って虚しい扉の閉まる音が聞こえて、途端に、私はペタリを座り込んだ。
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