没落人生から脱出します!
「フレディ君はこれと似た病気にかかっている。彼の場合は、全く魔力が作られないわけじゃない。ほんのわずかだが、魔力は生成できているんだ。その代わり、眠っている時間が長く、成長が遅い。生まれてすぐはずっと寝てばかりいるので、死んでいるのではないかと奥方は気が気ではなかったそうだよ」
エリシュカとリーディエは顔を見合わせた。自分の子供がいつ死ぬかわからないのだ。とてもまともな精神状態では居られないだろう。
「奥方は、彼が生まれてからずっと精神的に不安定だったそうだ。それでバンクス男爵とすれ違ってしまったんだろうね。メイドとの間に君ができたと分かったのはそんな頃だったらしいよ。知った奥方はますます不安定になった。君のお母さんを殺そうとしたこともあったそうだ」
自分が奥方の立場だと思えば、やりすぎだとは言えない。ただでさえ精神が不安定なところに、夫の裏切りが発覚したのだ。正気でいられる方が稀だろう。
「バンクス男爵は、君たちの安全を優先して、君の母親に暇を出した。もちろん、相応のお金を渡してね」
「捨てられたんじゃなかったんですか?」
「見方によっては捨てたってことになるだろうね。結局それから、バンクス男爵と君の母親は二度と会っていない」
リーディエは混乱してきていた。ブレイクの言い方を聞いていたら、まるで父がいい人のように聞こえてくる。だけどそんなはずはない。リーディエを一度だって抱きしめてくれない人がいい人なわけがない。