没落人生から脱出します!
「リーディエさんの目的が、男爵家をめちゃくちゃにすることなら私だって止めます。でもそうじゃないでしょう? お父さんに会いたいだけです。リーディエさんが、自分を保つために、どうしても必要なことなんですよ!」

 エリシュカにも不安はある。こうまでして、もし男爵がリーディエを認めてくれなかったら。リーディエは辛いだけだし、みんなに迷惑をかけるだろう。
 それでも、ここで自分を曲げれば、リーディエは一生辛くなる。
 それは直感だった。エリシュカが小さい頃に得た自己肯定感。あれはきっと、リアンからもたらされたものだ。それがあれば、迷っても前を向ける。けれど、ここで折れてしまったら、リーディエは自分を支える自己肯定感を得られないままになってしまう。

「リーディエさん、行きませんか?」
「……私……」

 リーディエは戸惑っているようだった。ヴィクトルは渋い顔をし、リアンはただ静かに動向を見守っている。
 リーディエはふたりにすがるようなまなざしを向けた後、エリシュカを見た。そして、決意したというように、エリシュカの手を取る。

「行きたい。……会いたいわ」
「リーディエ!」

 ため息をつくのはヴィクトルだ。彼はおそらく、この申し出には反対なのだろう。
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