没落人生から脱出します!
「待ちなさい、エリシュカ」
止めに入ったのはブレイクだ。
「叔父様、お願い」
「分かってる。止めはしない。ただ、場を選ぶのは僕に任せて欲しい。……夫人を傷つけるのは本意ではないのだろう? 内密に会えるように、僕の方で手配しよう」
エリシュカの顔が晴れる。
「ありがとう、叔父様」
「ブレイク様」
リーディエは申し訳なさそうな顔で彼を見上げた。
「気にしないで、リーディエ。姪っ子のわがままに、責任を持つのは僕の仕事だ」
「……そう言ってくれる叔父様がいることが羨ましいです」
「そうだね。……そうだよね」
ブレイクは苦笑し、リーディエの頭もクシャリと撫でた。
「リーディエ。君も僕にとって大事な従業員だよ。家族みたいに思っている。本当だ。エリシュカのお願いじゃなかったとしても、僕は君のために同じことをしたと思う」
その言葉に、リーディエはふいに胸が熱くなる。
(ああ、そうか)
欲しかったのは、きっとこんな愛情だ。
道を間違ったとしても、応援してくれる誰か。間違っていると諭してくれる誰か。そして、最後まで見捨てないと言ってくれる誰か。
(もう、持ってたんだ。私)
リーディエは込み上げてくる涙を、拭いもせずにただ流した。欲しかったものは、実はこの手にあった。それに気づかせてくれたのは、エリシュカだ。