没落人生から脱出します!
「いただきます」

 タイミングよくふたりの声が揃って、目と目が合ってほほ笑んだ。
 ふたりで向かい合って食べた赤い実は、少しばかり酸っぱかった。
 食べ終えると、エリシュカは期待に満ちた目でリアンを見つめる。

「……どうかしました?」
「リアン。こういうときは『君のご飯は世界一おいしい』って言うのよ?」

 リアンは噴き出すのをこらえるのに必死だ。おしゃまなエリシュカがかわいらしい。

「えっと。……世界一おいしくて、幸せなご飯でした」
「はい! おそまつさまでした」

 エリシュカは満足げに笑う。突拍子もないことを言うが、エリシュカは素直で愛らしい。リアンは胸の奥が温まって、落ち着かないような気持ちになる。

「くしゃん!」

 エリシュカがくしゃみをした。よく見れば、鼻の頭が赤くなっている。

「お嬢、寒かったですか?」

 リアンは上着を脱ぎ、エリシュカの肩に掛ける。さっきまで着ていたものだから温かいはずだ。エリシュカは一度ほほ笑んだ後、困ったように眉を下げた。

「あったかい……。でもリアンが寒いよ」
「俺は平気ですよ。あ、でも汚いですね、俺なんかの上着じゃ……。毛布もらってきましょうか」
「いい。それよりリアン、隣に来て」
「え?」
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