没落人生から脱出します!
 だんだんヴィクトルの声もヒートアップしてくる。騒がしさを聞きつけたのか、リアンが奥から出てきた。

「なんだ、何事だ?」
「ああ、旦那! 助けてくれよぉ」

 ごついモーズレイに抱き着かれそうになり、リアンはさっと身をよける。バランスを崩したモーズレイは、つんのめりそうになりながらも、転ばずにとどまった。さすが体術の教師をしてただけあって、体幹はしっかりしてそうだ。

「仕事を探してる?」

 モーズレイの嘆きを聞いたリアンは、しばらく考えるような仕草をした。

「ここで雇っちゃもらえないかね」
「駄目に決まってるでしょう? モーズレイさん、魔道具の知識なんにもないじゃない」

 はっきりと言い切るのはリーディエだ。

「これから覚えればいいじゃねぇかよぉ。なんだよ、俺だって……」

 モーズレイはすっかりしょげてしまっている。
 リーディエやヴィクトルが呆れた眼差しを向ける中、リアンだけは真顔である。

「……アンタは体が強いんだし、護衛仕事でも請け負えばどうだ?」
「護衛?」
「ずっと雇うのは無理だが、魔道具の材料採取のために、時々山に入らなければならないときがある。そんなときに護衛が欲しいのは事実だな」
「じゃあ」
「単発でよければ、雇うことはできる」
「やったー!」

 モーズレイは両手を上げて喜んだ。大人だというのに無邪気なものだ。
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