没落人生から脱出します!
自分で自分を許すのは、とても難しい。許しを請いたい相手がもう死んでいる場合には余計。それでも生きているものが、贖罪のためだけに生きるなんて、間違っているとエリシュカは思う。生きることは大変で、苦難も多い。足もとばかり、うしろばかりを向いていては、やがて前に進めなくなってしまう。
「ヴィクトルさんはその魔石を託されたんでしょう? お兄さんの想いを──家族を大切にしたいって気持ちを、受け継いだのですよね。だから、ヴィクトルさんは、家族の笑顔のために頑張っている。でもね、お兄さんのいう家族の中には、ヴィクトルさんも含まれているんです。だからヴィクトルさんもちゃんと幸せにならなきゃ」
「……なんつー、前向きな」
呆れたような声で、ヴィクトルがつぶやく。
そして、ポンポンとおぶっている足のあたりを叩いてくれた。
「ちゃんと連れて帰ってやるから、寝てな」
「眠いわけじゃ……」
ないのですけど、と続けようとしたが、本当はかなり疲れている。
ヴィクトルもその後は黙ってしまって、気まずいながらもエリシュカは緩やかに眠りの世界へと入っていった。
「……ありがとな、エリシュカ」
聞こえた声は、夢の中のものなのか、本当のものなのか分からないけれど、本物だったらいいなと思った。