没落人生から脱出します!
* * *
背中に乗せているエリシュカの重みが増す。呼吸音も寝息に変わり、背中に全身を預けてくる姿は無防備そのものだ。
「寝たか。本当に十七歳なのかな。危機感ねぇなぁ……」
やや呆れながら、ヴィクトルはつぶやく。これは、リアンの苦労が思いやられるというものだ。
「ヴィクトル」
考えていたら、本物のリアンが目の前に現れた。額にはやや汗がにじんでいる。おおかた、家に帰ってもエリシュカがいないので、捜しにでも来たのだろう。
「どうした? エリシュカになにかあったのか?」
「いやぁ? エリシュカはリーディエと夕食取ってたんだけどさ、帰りに会って、探し物を手伝ってくれたわけ」
「探し物?」
「昼間に落とした魔石」
胸ポケットからそれを出して見せると、リアンは少し検分して、「魔道具か」という。
「すごいね、リアン。分かるんだ?」
だったら。もっと早くに見せれば、あの映像のことはわかったかもしれない。
兄のことは、ヴィクトルの心にずっと複雑に絡みついていた。兄の死をきっかけにブレイクと出会い、ここで勤めるようになったため、彼らも事情は知ってはいるのだが。説明をするのが嫌で、ヴィクトルが自分から話すことはなかったし、魔石を見せたこともなかった。
リアンは軽く魔力をこめ、先ほどの映像を映し出した。
「……ああ、家族画か」
「兄貴のな。これ、俺が十四の頃だぜ、どう? かわいいだろ?」
「男にかわいいっていうのもな」
呆れたように言うリアンに、ヴィクトルは笑って見せる。
「まあ、これ探すのに、エリシュカは魔力を使ってくれたんだ。それで疲れて寝ちゃったってわけ」
「なるほど」
リアンは両手を出す。よこせと言っているようだ。だが、ヴィクトルは少しばかり悪戯心が出て、彼女を離さなかった。
背中に乗せているエリシュカの重みが増す。呼吸音も寝息に変わり、背中に全身を預けてくる姿は無防備そのものだ。
「寝たか。本当に十七歳なのかな。危機感ねぇなぁ……」
やや呆れながら、ヴィクトルはつぶやく。これは、リアンの苦労が思いやられるというものだ。
「ヴィクトル」
考えていたら、本物のリアンが目の前に現れた。額にはやや汗がにじんでいる。おおかた、家に帰ってもエリシュカがいないので、捜しにでも来たのだろう。
「どうした? エリシュカになにかあったのか?」
「いやぁ? エリシュカはリーディエと夕食取ってたんだけどさ、帰りに会って、探し物を手伝ってくれたわけ」
「探し物?」
「昼間に落とした魔石」
胸ポケットからそれを出して見せると、リアンは少し検分して、「魔道具か」という。
「すごいね、リアン。分かるんだ?」
だったら。もっと早くに見せれば、あの映像のことはわかったかもしれない。
兄のことは、ヴィクトルの心にずっと複雑に絡みついていた。兄の死をきっかけにブレイクと出会い、ここで勤めるようになったため、彼らも事情は知ってはいるのだが。説明をするのが嫌で、ヴィクトルが自分から話すことはなかったし、魔石を見せたこともなかった。
リアンは軽く魔力をこめ、先ほどの映像を映し出した。
「……ああ、家族画か」
「兄貴のな。これ、俺が十四の頃だぜ、どう? かわいいだろ?」
「男にかわいいっていうのもな」
呆れたように言うリアンに、ヴィクトルは笑って見せる。
「まあ、これ探すのに、エリシュカは魔力を使ってくれたんだ。それで疲れて寝ちゃったってわけ」
「なるほど」
リアンは両手を出す。よこせと言っているようだ。だが、ヴィクトルは少しばかり悪戯心が出て、彼女を離さなかった。