没落人生から脱出します!
「いらっしゃいませ」

 リーディエが笑顔で応対してくれたので、エリシュカはさっと後ろを向く。
 王都の学校に通っている二人が、どうして自領でもないこんなところにいるのだろう。
 麦わら色のかつらをつけている今のエリクをエリシュカだとすぐに見破ることはないだろうが、話したら絶対にバレる自信がある。

「どうしたの、エリク」
「すみません、ヴィクトルさん。事情は後で説明しますっ」

 エリシュカはそれだけ言うと、奥に下がった。

「ふーん、魔道具の店なんだ」
「ねぇねぇお姉さん。この道具は何? 説明してよ」

 双子はマイペースに店内を見て回っている。
 エリシュカは、作業場のリアンのところに走っていった。

「リアン、大変です」

 リアンは、木を組んで机のようなものを作っていた。エリシュカの姿を見ると金づちをうつのを止め、立ち上がる。

「……どうした、エリシュカ」
「お、お店に、マクシムとラドミールが来たんです」
「……坊ちゃん方が? なんでだ?」
「分かりません。私、今この格好だからすぐには気づかれなかったので、ヴィクトルさんに任せて逃げてきちゃったんですけど」
「正解だ。お前はここにいろ」

 ぽん、とエリシュカの背中を叩き、リアンが階下へと下りていく。とはいえ、エリシュカも気になるので、一緒に下に降り、店には出ずに奥から様子をうかがった。

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