没落人生から脱出します!
 リアンを呼びに行くほんの少しの間に、双子はやりたい放題やっていたらしい。いつの間にか相手をしているのはリーディエではなく、ヴィクトルに変わっていた。

「お客様、魔道具は繊細なものもございます。手に取るときは、私共にお声がけいただけますか?」
「あー、そうなんだ。ごめーん」

(ラドミールったら、貴族学校に行っても、口調が治ってないのね?)

 ラドミールは昔から口も態度も悪い。子供の頃は無邪気でかわいいと思えたが、背を抜かされたころからは、なぜいつまでも自分が子供だと思っているのだろうと不思議に思えたものだ。マキシムの方も、態度こそちゃんとしているが、中身はラドミールとそう変わりはない。
 ふたりとも、学校に行けば集団生活の中で礼儀が身につくと思ったのに……とエリシュカはやきもきする。
 双子とは、彼らが王都の学校に入学して以来だ。半年程度しか経っていないが、背が伸びたような気がする。
 エリシュカが縁談から逃げてきたために、キンスキー伯爵家の暮らしは厳しいはずだ。彼等の学費を出すのもやっとの状態のはずだが、どうやっているのだろう。
 リアンは事務所から上着をとってきて着込んだ。背筋をピシッと伸ばして立てば、立派な大人に見える。エリシュカに目配せして、店舗の方へ入っていく。

「お客様、お静かに願います」

 双子は新しく入ってきた人物に、じっと視線を注いだ。驚くのかと思ったら、にやりと笑う。

「やっぱり、リアン」
「フレディが言ってたリアンって、やっぱりお前のことだったのか」
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