没落人生から脱出します!
 リアンがそう言ってくれるので、エリシュカはほほ笑もうとした。けれど、やっぱり顔はこわばってしまう。

(……それでもやっぱり、あの子たちの行動は私の責任でもあるし)

 お茶もお菓子もおいしく、クッキーはあっという間に残りひとつになった。

「リアン、どうぞ」
「いや、エリシュカが食べればいい。甘いものは好きだろう」
「でも、……そうだ、半分こしましょう!」

 エリシュカはそう言い、クッキーを掴んでふたつに割った。そして、大きい方の破片をリアンに差し出す。

「一緒に食べたほうがおいしいです」

 リアンはそれをまじまじと見つめ、うっすら頬を染めて微笑んだ。

「……変わらないな、エリシュカは」
「そうですか?」
「昔から、使用人である俺にも同じものを分け合おうとしていた。まるで、家族みたいに」

 クッキーを掴んだ手を、握り込まれる。予想外のリアンの動きに、エリシュカの心臓がどきどきと高鳴ってきた。

「リ……リアン?」
「エリシュカ。今作っている魔道具ができたら、言いたいことがあるんだ」

 リアンのまなざしは、いつものような穏やかなものではなく、刺すような激しさがあって、エリシュカは心臓が落ち着かない。

「なにを、作ってるんですか?」

 喉が渇くように感覚に襲われながら問いかければ、リアンは柔らかく微笑んだ。

「……内緒だ」

 手をギュッと握られて、何も考えられなくなる。顔が真っ赤になっているような気がして、隠したいけれど、手を押さえられてそれもできない。

 そのとき、階下から騒がしい声が聞こえてきた。
 ふたりは顔を見合わせ、そろって廊下に出た。

「おやめください!」
「うるさい。ブレイクに会わせろ」

 エリシュカは慌ててかつらを押さえる。聞き覚えのある声は父のものだ。
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