没落人生から脱出します!
(なんでお父様が? また叔父様に迷惑をかけちゃう。止めなきゃ)
飛び出そうとしたエリシュカを、リアンが腕を掴んで止める。
「駄目だ、行くな」
「でも」
「ブレイク様に任せておけばいい」
その間に、キンスキー伯爵は二階への階段をずんずんと上ってきた。
ブレイクの部屋の扉があき、不機嫌そうに頭をかきながら、ブレイクが現れる。
「兄さん? いきなりなんなんだい? 家で騒がないでくれ。病気の妻が休んでいると知っているだろう?」
ブレイクは、あからさまな騒音を立てる伯爵に苛立ちを隠さずに抗議した。
エリシュカとリアンは、物陰からそれを見ている。伯爵はふたりには気づいていないようだ。
「そこにいたか。ブレイク。エリシュカを出せ。ここに居るんだろう?」
「兄さん、何度も言っているけれど、エリシュカのことは知らないよ」
「しらばっくれるのもいい加減にするんだな。マクシムたちに聞いて、いろいろと証拠を集めたぞ。ここに出入りしている小僧がいるだろう。そいつがエリシュカだ」
キンスキー伯爵は自信ありげに言うと、階段を上りきり、ブレイクを見下ろした。
「エリシュカの保護者は俺だ。出さないならお前を訴えるぞ」
「本気で言ってる? エリシュカは自分の意志で出て行ったんだろう? 兄さんがしていることは虐待と同じだよ。借金を返すためにエリシュカを犠牲にするなんて間違っている」
「あの子はキンスキー家のものだ。どう使おうと、それは当主である俺が決めること。幸い、お相手はエリシュカが病気ですぐに輿入れできないという説明を信じてくれていてな。医療費まで払ってくれると言うんだ。こんなに心配してくれる相手に嫁ぐのはエリシュカにとっても幸せだろう」