没落人生から脱出します!
掴み合いになったふたりに、使用人がオロオロと割って入る。
父の人を人とも思わない態度に、エリシュカも今度ばかりは怒りを抑えることができなかった。
「やめて!」
「あ、待てっ」
リアンの静止より早く、エリシュカは彼の脇を抜け出してキンスキー伯爵の前に仁王立ちした。
「叔父様を責めないで。私が頼んだの。匿ってほしいって」
少年の姿のままで、にらみつけるエリシュカを、キンスキー伯爵はにやりと笑って見つめた。髪を掴み、かつらを取り払う。エリシュカのおさげに結んだ銀色の髪が、肩にポテンと落ちる。
「……やはりいたじゃないか。エリシュカ」
「出てくるなと言ったじゃないか、エリシュカ!」
ブレイクは悔しそうに唇をかみしめた。
「帰るぞ。お前のせいでこっちは大変だったんだ」
エリシュカの腕を掴み、引きずっていこうとする伯爵の手をリアンが止めた。
「なんだ? ……お前、リアンか?」
「お久しぶりですね。旦那様」
リアンは険しい目つきで伯爵を睨みつける。
「リアン。駄目です。お父様。私が帰れば、リアンや叔父様には手を出さないでいてくれますね」
「エリシュカ。お前は犠牲になるのが嫌で飛び出してきたんだろう? なぜ帰ろうとするんだ」
叫ぶように問いかけたリアンに、エリシュカは心臓が絞られたような気持ちになる。
「……私がここにいると、大事な人を傷つけてしまうからです」
「なに?」
「政略結婚は嫌です。だけど、これ以上、大事な人たちから何かを奪うのはもっと嫌です」
父の人を人とも思わない態度に、エリシュカも今度ばかりは怒りを抑えることができなかった。
「やめて!」
「あ、待てっ」
リアンの静止より早く、エリシュカは彼の脇を抜け出してキンスキー伯爵の前に仁王立ちした。
「叔父様を責めないで。私が頼んだの。匿ってほしいって」
少年の姿のままで、にらみつけるエリシュカを、キンスキー伯爵はにやりと笑って見つめた。髪を掴み、かつらを取り払う。エリシュカのおさげに結んだ銀色の髪が、肩にポテンと落ちる。
「……やはりいたじゃないか。エリシュカ」
「出てくるなと言ったじゃないか、エリシュカ!」
ブレイクは悔しそうに唇をかみしめた。
「帰るぞ。お前のせいでこっちは大変だったんだ」
エリシュカの腕を掴み、引きずっていこうとする伯爵の手をリアンが止めた。
「なんだ? ……お前、リアンか?」
「お久しぶりですね。旦那様」
リアンは険しい目つきで伯爵を睨みつける。
「リアン。駄目です。お父様。私が帰れば、リアンや叔父様には手を出さないでいてくれますね」
「エリシュカ。お前は犠牲になるのが嫌で飛び出してきたんだろう? なぜ帰ろうとするんだ」
叫ぶように問いかけたリアンに、エリシュカは心臓が絞られたような気持ちになる。
「……私がここにいると、大事な人を傷つけてしまうからです」
「なに?」
「政略結婚は嫌です。だけど、これ以上、大事な人たちから何かを奪うのはもっと嫌です」