没落人生から脱出します!
 エリシュカが持っていたものと同じく、ネズミのおもちゃを模してあり、尻尾の紐を引っ張ると、カタカタ音を立てて前に動く。
 以前と同じように魔力を込めると、ネズミの目玉がぎょろりと動いた。

(相変わらず、この目玉には慣れないわね)

 赤い瞳が青くなり、『ジー、ジー』と機械音を立てる。
 そして瞳が緑色にと変化した。

『エリシュカだろ!』

 こちらが話しかけるより前に、ブレイクの声がした。

『叔父様?』

 こんなにすぐ反応するということは、エリシュカが弟の子ネズミの存在に気づくのをずっと待っていてくれたのだろうか。

『ああよかった。エリシュカ、心配するなよ。絶対に君を助け出してあげるから』
『違うの。叔父様。私、思いついたの。魔力を生成する方法。木を調べてみてくれないかしら……』
『木? なんの話だ。それより……うわ、悪い。魔力が』

 そのままブツリと通信が切れる。

「……相変わらず魔力不足状態なのね。叔父様」

 ちょっと呆れつつ、変わらない叔父にクスリと笑がこみ上げてきた。

「きっと叔父様なら、今のだけでも私と同じ結論にたどり着いてくれるわ」

 この世界ではまだ光合成という概念は見つかっていないが、コツコツ調べることができるブレイクならば、きっと大丈夫だ。

(これできっと、エレナさんは大丈夫。だから私は、心配せず嫁げばいい)
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