没落人生から脱出します!
エリシュカが悲壮な決意を固めたその時だ。
「お嬢様、どこにいらっしゃいますか」
使用人の声が廊下に響く。エリシュカは子ネズミをドレスに隠し、箱を元通りに戻してから、マクシムの部屋を出た。
誰にも見つかる前に自分の部屋にまで戻ろうと思ったが、途中でメイドに見つかる。
「どこにいらっしゃったのですか! 旦那様がお呼びです。お早く」
「ちょ、ちょっと待って」
メイドに背中を押されるようにして、連れてこられたのは父の執務室だ。
「御用ですか、お父様」
「おお、来たか。エリシュカ」
部屋の中には、父のほかに、大柄な男がひとりいた。背が高く肩幅もあり、豪華な衣装がよく似合っている。振り向いた男の顔を見て、エリシュカは一瞬頭が真っ白になった。
「……え?」
「やあ、お嬢さん」
口もとにひげがあるが、どう見ても彼は、フレディの元家庭教師のモーズレイだ。『魔女の箒』に顔を出したときと違い、仕立ての良いスーツを着込んでいるからか、一瞬別人に見える。
「こちらはクリフ・モーズレイ氏だ。うちの土地を買いたいとおっしゃっている」
父が満足そうに紹介した。モーズレイはゴホンと咳ばらいをして頷く。どうも威厳を保とうとしているようだが、たまに目が泳いでいるのが見て取れた。
(あのモーズレイさんだよね。口もとのは付け髭……?)
「お嬢様、どこにいらっしゃいますか」
使用人の声が廊下に響く。エリシュカは子ネズミをドレスに隠し、箱を元通りに戻してから、マクシムの部屋を出た。
誰にも見つかる前に自分の部屋にまで戻ろうと思ったが、途中でメイドに見つかる。
「どこにいらっしゃったのですか! 旦那様がお呼びです。お早く」
「ちょ、ちょっと待って」
メイドに背中を押されるようにして、連れてこられたのは父の執務室だ。
「御用ですか、お父様」
「おお、来たか。エリシュカ」
部屋の中には、父のほかに、大柄な男がひとりいた。背が高く肩幅もあり、豪華な衣装がよく似合っている。振り向いた男の顔を見て、エリシュカは一瞬頭が真っ白になった。
「……え?」
「やあ、お嬢さん」
口もとにひげがあるが、どう見ても彼は、フレディの元家庭教師のモーズレイだ。『魔女の箒』に顔を出したときと違い、仕立ての良いスーツを着込んでいるからか、一瞬別人に見える。
「こちらはクリフ・モーズレイ氏だ。うちの土地を買いたいとおっしゃっている」
父が満足そうに紹介した。モーズレイはゴホンと咳ばらいをして頷く。どうも威厳を保とうとしているようだが、たまに目が泳いでいるのが見て取れた。
(あのモーズレイさんだよね。口もとのは付け髭……?)